ウェールズの料理人たちは、常に新しい視点で物事を捉えます。その精神をよく表しているのが、グラモーガン・ソーセージです。伝統的な豚肉の詰め物の代わりに、チーズと細かく刻んだリーキを組み合わせ、パン粉でやさしく包み込んで仕上げられています。

このベジタリアンのソーセージは、南ウェールズの歴史あるグラモーガン州にルーツを持ちますが、実はグラモーガン種の牛にちなんで名付けられたと考えられています。この牛が生産していたのは、かつてこの料理の主役だった硬質のホワイトチーズです。

現在では、グラモーガン種の牛は絶滅危惧種となったため、代わりにウェールズのもうひとつの名物であるケアフィリーチーズが使われています。

グラモーガン・ソーセージは、少なくとも19世紀半ばからウェールズで親しまれてきました。肉を使わず、古くなったパンをパン粉として活用するなど、工夫にあふれたこの料理は、戦時下の質素な日々に大きな人気を博しました。

しかし、今に至るまでその人気が衰えない理由は、やはりその美味しさです。中がクリーミーなこのソーセージは、ウェールズ国内はもちろん、イギリス各地のレストランやスーパーでも定番となっており、ウェールズ発の料理のひとつとして広く親しまれています。

どんな時に食べられるの?

1862年の旅行ガイド『Wild Wales』で、19世紀イギリスの作家であるジョージ・ヘンリー・ボローは、グラモーガン・ソーセージが朝食として提供されたことを紹介しています。その際は、紅茶とトーストと一緒に楽しんだそうです。

現在でも朝食メニューに登場することはありますが、一般的にはランチやディナーで味わわれることが多くなっています。前菜としてディップやチャツネとともに、あるいはメインとしてマッシュポテトや野菜、グレイビーを添えて提供されるのが定番です。

シェフからひとこと

伝統的なグラモーガンソーセージのレシピでは、ほとんどの場合、チーズとパン粉を同量ずつ使うことがすすめられています。当時戦後の配給制を考慮した節約の工夫だったのでしょう。

しかし現代では、チーズをパン粉の約2倍の割合で使うことをおすすめします。こうすることで、より柔らかくリッチに、とろりとした美味しさを存分に楽しめるソーセージに仕上がります!

下記のレシピではオーブンでの調理方法をご紹介していますが、必要に応じてフライパンでもしっかり火を通すことができます。その場合は、中火で片面約3分ずつ焼き、バターが焦げないように油を深さ5mmほど入れて調理するのがおすすめです。

1980年代のグラモーガン・ソーセージのレシピで、ウェールズ伝統料理の著名なフードライター、ボビー・フリーマンは、具材に白と茶色のパン粉を半々で使うことをおすすめしています。確かに美味しく仕上がりますが、必ずしも必要ではありません。衣には白いパン粉を使うのがよいでしょう。

3月下旬から5月にかけて、南ウェールズではニンニク(ワイルドガーリック)が芽を出します。ソーセージに加えると、とても美味しく仕上がります。

作り方は簡単。ガーリックの葉をひとつかみほど細かく刻み、レシピの手順どおり進める前に、フライパンでリーキを炒めている最後の30秒ほどで加えるだけ。爽やかな香りがふわっと広がります。

フライパンで焼かれているグラモーガンソーセージ
フライパンで焼かれているグラモーガンソーセージ

グラモーガン・ソーセージの作り方

4人分|準備時間:20分|料理時間:30分

材料

  • バター 40g
  • 中サイズのリーキ(西洋ネギ) 2本(細かく刻んで洗っておく)
  • フレッシュタイム 小さじ2(細かく刻む)
  • 塩、こしょう、ナツメグ 適量
  • マスタードパウダー 小さじ1
  • 卵 2個(卵白と卵黄に分ける)
  • 牛乳 大さじ2
  • ケアフィリーチーズ 200g
  • パン粉 100g(衣用に少量余分に用意)
  • フレッシュハーブ 大さじ2(パセリとチャイブのミックスがおすすめ)
  • 植物油 (揚げる用)
  • 薄力粉 50g

作り方

ステップ1: フライパンでバターを半量溶かし、刻んだポロネギとタイムを柔らかくなるまで炒めます。塩、こしょう、ナツメグ、マスタードパウダーで味を整えます。

ステップ2: 小さめのボウルで卵黄と牛乳の半量を混ぜ合わせます。大きなボウルにチーズをパン粉と一緒にほぐし、炒めたリーキを加え、続けて卵黄と牛乳を加えます。よく混ぜ合わせたら、8本のソーセージの形に成形します。

ステップ3: この段階で、混ぜた材料を冷蔵庫で30分ほど休ませると、ソーセージが形を保ちやすくなり、衣付けも楽になります。時間がない時は必須ではありません!

ステップ4: オーブンを190℃に予熱します。浅めのボウルに残しておいた卵白と残りの牛乳を混ぜ合わせます。別のボウルに薄力粉を、さらにもう一つのボウルに残りのパン粉を用意します。

ステップ5: 冷やして形を整えたソーセージを取り、まず薄力粉に、次に卵白液に、最後にパン粉にくぐらせます。

このレシピはシェフのアレックス・ヴァインズ(Alex Vines)によって開発・検証されました。彼はロンドンの名店で10年以上にわたり腕を磨き、「シンプルかつ丁寧」な料理スタイルを確立。カーディフ出身のアレックスは、地元産・旬の食材を大切に使うことで、伝統的なウェールズ料理の精神を現代に受け継いでいます。是非、アレックスのInstagramもフォローしてください。

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