コーンウォールで親しまれている、牛肉と野菜を詰めて焼いた半円形のパイ、パスティは、ウェールズでも18世紀半ばに食べられていました。1768年に出版されたトーマス・ペナントの『British Zoology』には、ウェールズの人々がヤギ肉を詰めたパスティを特に好んでいたことが記されています。 

かつての素朴なパスティを基に現代風にアレンジされたのがウェルシュ・オギーです。外はしっかりとしたクラストで包まれ、中にはラム肉とリーキといったウェールズならではの具材が詰まっています。 

かつては炭鉱労働者の昼食の定番として親しまれ、道具を使わず手で食べられることから重宝されました。現在では、ウェールズ国内のベーカリーはもちろん、ウェールズ最高峰スノードン山(Yr Wyddfa)の頂上にあるお店でも味わうことができます。 

また、ウェールズのラグビーの試合では、「オギー、オギー、オギー;オイ、オイ、オイ」という掛け声を耳にすることもあります。これは、かつて炭鉱労働者たちが煤で汚れたパスティの外側のクラストを捨てる際に「オギ!」と叫び、仲間が「オイ!」と応えたという習慣に由来すると言われています。 

どんなときに食べられるの?

ランチの定番として親しまれるこのペストリーは、美しいウェールズの田園を歩くときの、手軽で気軽なピクニックにもおすすめです。

シェフからひとこと

このレシピでは、肉も野菜も生のままパイ生地の中で火を通すため、準備の際は小さめのサイズにカットするのがおすすめです。ラムの肩肉や首肉を使う場合は、薄めの細切り(約5mm厚)にすると、火の通りが均一になり、硬くなりにくくなります。また、パスティの上面に穴を開けないようにすると、蒸気が逃げず、しっとり仕上がります。 

次に、生地の縁を閉じる「クリンプ(ひだ寄せ)」という作業が必要です。少しコツがいる作業ですが、困ったときはインターネット上にたくさん参考になる動画があるので、ぜひチェックしてみてください。 

伝統では、ウェールズの沿岸部では羊肉やマトンに、世間一般で「ウェールズのキャビア」として知られるラバーブレッド(海藻)とセビルオレンジジュースを混ぜた「ラバーソース」を添えて食べてきました。 

オギーの具材にラバーブレッド大さじ3と細かく刻んだマーマレード大さじ1を加えると、さらに風味豊かなバリエーションを楽しめます。ウェールズ沿岸の湿地で放牧されたラム肉とラバーブレッドを一緒に調理すると、肉本来の旨味がより引き立ちます。 

お皿に盛り付けられたウェールズのオギー(ペイストリー)
ウェールズのオギー

ラムオギーの作り方 

分量: 4人分 | 準備時間: 1時間(生地の冷却に30分を含む) | 調理時間: 1時間  

材料 

パイ生地 

  • 冷やして角切りにした無塩バター 200g 
  • 薄力粉 400g(打ち粉用に少量余分に用意) 
  • 卵 2個 
  • 氷水 大さじ4 
  • 塩 小さじ½ 
  • 砂糖 小さじ½ 

フィリング具材 

  • 骨なしラム肉またはマトン 300g(もも肉がおすすめ) 
  • 中サイズのリーキ(長ネギ・西洋ネギ)   1本 
  • 小かぶ 1個(皮をむく) 
  • 中サイズのじゃがいも 2個(皮をむく) 
  • 粗挽き黒こしょう 小さじ1 
  • 塩 小さじ1 
  • フレッシュローズマリー(みじん切り)小さじ1 
  • 溶かして冷ました無塩バター 40g 

作り方 

ステップ1: ボウルに卵2個と氷水を入れ、よく混ぜ合わせます。 

ステップ2: バター(200g)と薄力粉を塩と砂糖と一緒に、手かフードプロセッサーでそぼろ状になるまで混ぜます。そこに卵と氷水の半量を加え、生地がまとまるまで混ぜ、硬めの生地を作ります。(混ぜすぎに注意してください!)生地を4等分し、平らな円盤状にして最低30分冷蔵庫で休ませます。 

ステップ3: オーブンを220℃に予熱します。野菜とラム肉を1cm角に切り、塩、黒こしょう、ローズマリー、溶かしたバター(40g)と一緒に混ぜます。 

ステップ4: 作業台に軽く打ち粉をし、1枚ずつ生地を伸ばします。厚さは1ポンド硬貨(約3mm)程度。お皿を型にして、直径約20cmの円にカットします。 

ステップ5: 生地の片側に具材の1/4をのせ、縁1cmは空けます。ステップ1の残りの液(卵と氷水)を縁に塗り、生地を閉じます。 

端がしっかり合うように押さえ、親指と人差し指で縁をひだ状に押さえて閉じます。残りの生地も同様に作ります。  

ステップ6: 具材を詰めたパスティ4つを天板に並べ、オーブンシートを敷き、残りの卵液を塗ります。まず10分焼き、その後温度を180℃に下げさらに45分焼きます。 

焼き上がったらクーリングラックで冷ますか、できればオーブンから出したてをフレッシュミントソースと一緒に楽しんでください。 

このレシピはシェフのアレックス・ヴァインズ(Alex Vines)によって開発・検証されました。彼はロンドンの名店で10年以上にわたり腕を磨き、「シンプルかつ丁寧」な料理スタイルを確立。カーディフ出身のアレックスは、地元産・旬の食材を大切に使うことで、伝統的なウェールズ料理の精神を現代に受け継いでいます。是非、アレックスのInstagramもフォローしてください。  

 

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