「アングルシー・エッグ」は、ウェールズ北端に位置する島・アングルシー島(ウェールズ語でアニス・モーンYnys Môn)にちなんで名付けられた料理です。ウェールズとの深い結びつきが感じられる一方で、その起源は定かではなく、かつての侵攻勢力が持ち込んだ料理であるという説もあります。
確かなのは、この料理が何世代にもわたり、ウェールズの家庭で食卓を支えてきたこと。
マッシュポテト、リーキ、チーズ、そして主役の卵を組み合わせ、パン粉をふりかけてオーブンで焼き上げる、ボリューム満点の一皿です。
面白いことに、このレシピは、アニス・モーン(アングルシー)が卵にまつわる唯一の歴史的文化ではないのです。1960年代まで島では、「クラピオ・オイアイ(clapio wyau)」と呼ばれるユニークなイースターの風習がありました。子どもたちが木製の鳴らし道具を持って近隣の家を訪れ、特別な詩を唱えると、報酬として卵をもらえるというものでした。もしかすると、その卵が後にこの料理に使われていたのかもしれません。
どんな時に食べられるの?
アングルシー・エッグは、手軽に作れて栄養も豊富な家庭料理。4人家族にちょうどよい分量で、ディナーにもぴったりです。
シェフからひとこと
伝統的なレシピでは、卵をオーブンに入れる前に固ゆで卵にする方法がよく使われます(このレシピのように、生のまま混ぜてオーブンで加熱するのではなく)。先に卵をゆでてから作りたい場合は、卵を6分間ゆでて半熟にし、氷水で冷やして殻をむき、マッシュポテトの中に埋めてから焼くのがおすすめです。この方法なら、オーブンで約25分焼いたあと、ちょうど良い仕上がりになります。
じゃがいもはマリス・パイパー(Maris Piper)種のじゃがいもがよく合いますが、デジレー(Desiree)、エスティマ(Estima)、キング・エドワード(King Edward)でも代用可能です。
また、伝統的なリーキ(西洋ネギ)の代わりにマッシュルームやキャベツを炒めたものを使うアレンジもおすすめ。冷蔵庫や家庭菜園にある食材で、自由に工夫して楽しんでみてください。
アングルシー・エッグの作り方
分量:4人分|準備時間:30分|調理時間:50分
材料
•じゃがいも 600g(上記「シェフからのメモ」参照、外はカリカリ、中がふわふわに仕上がる品種だと尚よし)
• バター 120g(耐熱皿に塗る分を少量別に取っておく)
• リーキ(西洋ネギ) 中4本(洗ってスライス)
• 牛乳 300ml
• 小麦粉 30g
• ナツメグ ¼個分(すりおろし)
• マスタード(イングリッシュまたはディジョン) 小さじ1
• チェダーチーズ(すりおろし) 100g ※ウェールズではケアフィリーチーズがおすすめです。
• パン粉 30g(お好みで)
• 卵 4個
• 塩・こしょう 適量
作り方
ステップ1: オーブンを220℃に予熱する。じゃがいもの皮をむいて4等分し、塩を加えた湯で約15分、柔らかくなるまで茹でる。茹で上がったらマッシュして置いておく。
ステップ2: 鍋にバター70gを入れて中弱火で溶かし、リーキを加えてふたをする。時々かき混ぜながら20分ほど炒め、しんなりしたらマッシュポテトに加えてよく混ぜ、塩・こしょうで味を調える。
ステップ3: チーズソースを作る。残りのバターを鍋で溶かし、小麦粉を加えて2分ほど炒める。牛乳を4回に分けて加え、その都度泡立て器でなめらかにする。弱火にして15分ほど煮込み、マスタード・ナツメグ・チーズの半量を加える。味見をして塩・こしょうで整える。
ステップ4: 耐熱皿にバターを塗り、マッシュポテトを敷き詰めて卵を入れるくぼみを4つ作る。卵を割り入れ、黄身を崩さないように注意する。上からチーズソースをかけ、残りのチーズとパン粉をのせてオーブンで20〜25分焼く。
白身が固まり、黄身が少しとろっとしているのが理想。
ステップ5: 焼き上がったらパンやサラダを添えて。ソースをパンで拭って食べるのもおすすめです。
このレシピはシェフのアレックス・ヴァインズ(Alex Vines)によって開発・検証されました。彼はロンドンの名店で10年以上にわたり腕を磨き、「シンプルかつ丁寧」な料理スタイルを確立。カーディフ出身のアレックスは、地元産・旬の食材を大切に使うことで、伝統的なウェールズ料理の精神を現代に受け継いでいます。是非、アレックスのInstagramもフォローしてください。