バターをたっぷり塗ったバラブリスの一切れは、まさにウェールズ流の最高の癒やしです。紅茶に漬けたドライフルーツを混ぜ込んで焼き上げたこのパンは、もともとは家庭で作られていた素朴なおやつでしたが、今ではウェールズ各地のカフェやベーカリーで愛される定番の焼き菓子となっています。 

“バラブリス(Bara Brith)”とはウェールズ語で「斑(まだら)なパン」、つまりフルーツで彩られたパンという意味。その始まりは、ウェールズのパン職人たちが余ったパン生地に砂糖、果物、スパイスを混ぜ込み、特別な日の甘いごちそうとして焼いたことにあると伝えられています。 

時を経てレシピは少しずつ変化しましたが、このウェールズ伝統のフルーツブレッドはいまも祝い事やセント・デイヴィッズ・デー(ウェールズの守護聖人の日)などで欠かせない存在です。 
焼き上がったフルーツブレッドはスライスして仕上げにバターを塗ったり、時にはハチミツをかけていただきます。 

どんな時に食べられるの ? 

バラブリスは紅茶やコーヒーと相性抜群。午前中のブレイクタイムや午後のティータイムにぴったりです。 
伝統を重んじる人の中には「焼いた翌日、あるいは2日まで密閉して味をなじませてから食べるのが本当の楽しみ方だ」と語る人もいます。 

シェフからのひとこと 

本来のバラブリスのレシピでは、セルフレイジング・フラワー(ベーキングパウダー入り小麦粉)ではなくイーストを使って生地を発酵させるのが伝統的です。現在ウェールズ各地で広く作られているこのレシピでは、紅茶に一晩漬けたドライフルーツを使い、しっとりとしたケーキのような食感に仕上げます。下記の分量は1本分ですが、2本分を作る場合は材料を倍にしてもOK。密閉容器に入れれば約1週間保存可能です。軽くトーストしたスライスに冷たい有塩バターをのせると、バターがじんわり溶けて至福の味わいに。生地に油脂をほとんど使わないため、バターをたっぷり塗るのがおすすめです。また、香り豊かなウェールズのチーズと合わせても絶品です。 

焼きたてのバラ・ブリスが入った型
焼きたてのバラ・ブリスが入った型

バラブリスの作り方 

分量:8〜10スライス分|準備時間:15分|焼き時間:1時間 
 
材料 
• ミックスドライフルーツ(レーズン、サルタナ、カラントなど) 400g 
• 濃い目のホットティー  300ml 
• セルフレイジング・フラワー(ベーキングパウダー入り小麦粉) 250g 
• ミックススパイス  小さじ1 
• ブラウンシュガー  100g 
• 卵1個(溶いておく。平飼い卵なら尚よい) 

作り方 
ステップ1:ボウルにドライフルーツを入れ、熱い紅茶を注ぐ。砂糖を加えてよく混ぜ、完全に溶かす。そのまま少なくとも6時間、できれば一晩置いてフルーツをふっくら戻す。 
 
ステップ2:しっかり浸かったフルーツに、小麦粉とミックススパイスをふるい入れ(紅茶を捨てる必要はありません)、卵を加えてよく混ぜる。 

ステップ3:オーブンを180℃に予熱。900gサイズのローフ型にクッキングシートを敷き、生地を流し入れる。 
 
ステップ4:約1時間焼き、膨らんで中まで火が通ったら網の上で冷ます。焼いた後は2日間ほど密閉して寝かせると味が落ち着きます。食べるときはスライスしてバターを塗ったり、ハチミツをかけてグレーズのように仕上げてください。  

このレシピはシェフのアレックス・ヴァインズ(Alex Vines)によって開発・検証されました。彼はロンドンの名店で10年以上にわたり腕を磨き、「シンプルかつ丁寧」な料理スタイルを確立。カーディフ出身のアレックスは、地元産・旬の食材を大切に使うことで、伝統的なウェールズ料理の精神を現代に受け継いでいます。是非、アレックスのInstagramもフォローしてください。 

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