ウェールズ出身のイギリス映画界を代表する俳優リチャード・バートン。その人物像に迫るには、南ウェールズの渓谷や海岸線ほどふさわしい舞台はないでしょう。

3日間の旅では、バートンの少年時代に歩いた道や、演劇や言語に目覚めた場所を訪れます。どれだけ遠く離れ、どれほどの名声を手にしても、彼の心に深く刻まれたこの美しい土地を肌で感じることができます。

西ウェールズのアヴァン渓谷の中心にある鉱山村ポントゥリーダヴェンから、ポート・タルボット、そしてさらに西へ向かい、エリザベス・テイラーと共演した「アンダー・ミルク・ウッド」の舞台となった港町フィッシュガードへ。72時間の旅の始まりです。
*「アンダー・ミルク・ウッド」:ウェールズの小さな漁村を舞台にしたラジオ劇

1日目|ポントゥリーダヴェン&ポート・タルボット

ウェールズの炭鉱労働者の家庭に生まれたリチャード・バートンは、幼少期をポントゥリーダヴェンと近郊のポート・タルボットで過ごしました。現在も、この地には彼の家族が暮らしています。

「炭鉱で働き、ラグビーをし、物語を語り、戦いの歌を歌う――そんな英雄たちに囲まれて、私は育った」
 ― リチャード・バートン

バートンとエリザベス・テイラーは、たびたびポントゥリーダヴェンに帰省し、テイラーはこの地を「ポントゥリッド・ヘブン(天国)」と呼んでいました。

世界的なスターでありながら、帰省の際にはバートン家のテラスハウスに滞在し、テイラーは洗い物をし、バートンの姉妹からウェールズ語を学んでいたそうです。

彼女は1984年にバートンが亡くなった際はすでに離婚していましたが、再びこの家に滞在したこともありました。

上空から見たポントゥリーダヴェンの風景
ポントゥリーダヴェン

午前
南ウェールズの宿泊先に到着後、チェックイン。ここで2泊します。

続いてポントゥリーダヴェンを訪れ、彼の歩みをたどる散策ルートのひとつを巡ります。

4.8km(3マイル)の「バースプレイス・トレイル」は、ポントゥリーダヴェンの穏やかな村の風景とともに、アファン渓谷を見渡す景色が広がります。

この散策コースにはバートンの出生地をはじめ、ペンヒッド・ストリート、1898年に建てられた高架橋、そして彼の死後に追悼式が行われたベセル礼拝堂が含まれます。

リチャード・バートン・バースプレイス・トレイルの進行方向を示す、円形サインの付いた木製の道標
暖炉のそばに立つリチャード・バートンと、椅子に座って会話をする大人たちを写した、リビングルームでのモノクロ写真
リチャード・バートン・バースプレイス・トレイルと、ペンヒッド・ストリートで家族と過ごす少年時代のリチャード・バートン。

午後

ポントゥリーダヴェンでの時間を過ごした後は、渓谷を下って海岸へ向かいます。

  • 渓谷を下った先にある産業都市、港町のポート・タルボットにある「チャイルドフッド・トレイル」(約2.4km)では、バートンが10代を過ごしたゆかりの地をたどります。地元の若者向け舞台に出演していたタイバック・コミュニティ・エデュケーション・センターや、本や文学に親しんだタイバック図書館などを巡ります。
  • 散策の締めくくりは、バートン自筆の詩と彼の像が佇むタルボット・メモリアル・パークに立ち寄ります。

宿泊

アイヴィー・コテージ(マーガム・カントリー・パーク)

スウォンジー・バレー・ホリデー・コテージズ

クライナント・コテージズ

フェドウェン・ポッズ

食事

フォーティー・シックス

シナモン・キッチン

ザ・ブリット・パブ
ニース・ポート・タルボット周辺のレストランやバーについて、さらに詳しくはこちらをご覧ください。

2日目|スウォンジー&アベラヴォン

スウォンジーは、ポート・タルボットと同じ南ウェールズの海岸線にあり、距離も近いことから、バートンはこの街で多くの時間を過ごし、スウォンジー・グランド・シアターでの舞台出演も行いました。

現在、この街の海沿いにある大学には、公式なリチャード・バートン・アーカイブが所蔵されています。

アベラヴォン・ビーチも、バートンと深いゆかりのある場所です。

バートンとエリザベス・テイラーがポート・タルボットに戻る際には、全長およそ4.8kmに広がる砂浜に、ヘリコプターで降り立っていたという逸話が残されています。

午前

朝食後は、事前予約にて、スウォンジー大学ウォーターフロントのシングルトン・キャンパスに所蔵されるリチャード・バートン・アーカイブを見学します。

館内では、バートンが自身と向き合いながら綴った言葉や、文学への深い愛情を感じさせる直筆原稿に触れることができます。

芝生と海に隣接するスウォンジー大学のキャンパス建物
スウォンジー大学キャンパス

アーカイブ見学の後は、車で少し移動し、海辺の村・マンブルズでランチを楽しみます。

マンブルズはガワー半島の玄関口として知られ、歴史あるオイスターマウス城やマンブルズ・ピア、ショップやレストラン、そして有名な「マンブルズ・マイル」と呼ばれるパブ通りがあります。

午後

その後は東へ車を走らせ、アベラヴォン・ビーチへ。到着後は、ウェールズ・コースト・パスを辿りながら、穏やかな午後の散策を楽しみます。

ウェールズ・コースト・パスは、ウェールズの海岸線を一周する約1,400kmのロングトレイル。国内の海岸を途切れることなく結ぶ公式のルートが整備されているのは、世界で唯一ウェールズだけです。

どこまでも続く砂浜と、スウォンジー湾へと緩やかに溶け込む海岸線が広がるアベラヴォン・ビーチ。そのスケールの大きさは圧巻です。海岸沿いの散策路を散策するのも、バートンとエリザベス・テイラーが帰省時にヘリコプターを降ろしたという砂浜を歩くのもおすすめです。

食事

モール

モトリー

アルバート・ホール

スウォンジーおよびマンブルズ周辺の、食事やドリンクが楽しめるスポットについて、詳しくはこちらをご覧ください。

3日目|フィッシュガード(ペンブルックシャー)

1971年、リチャード・バートンは、ディラン・トーマスの代表作を映画化した「アンダー・ミルク・ウッド」の撮影のため、海沿いの町、フィッシュガードへ戻ってきました。

本作は、エリザベス・テイラーとの再共演に加え、友人で俳優のピーター・オトゥール(当時、ウェールズ出身の女優シアン・フィリップスと結婚)も出演する、豪華な顔ぶれの作品でした。

曲がりくねった町の通りや港は、架空の村「ラレガブ」の舞台として使われ、地元の人々もエキストラとして撮影に参加しました。ペンブルックシャーの荒々しくも美しい自然は、トーマスの詩情あふれる世界観を引き立てています。

Richard Burton on set of Under Milk Wood (1971)
『アンダー・ミルク・ウッド』(1971年)の撮影現場にいるリチャード・バートン

午前

南ウェールズを早朝に出発し、約1時間半〜2時間のドライブでフィッシュガードへ向かいます。

到着後、軽く休憩をとり「アンダー・ミルク・ウッド」の主なロケ地となったロウワー・フィッシュガードを散策します。

港や埠頭沿いは多くの屋外シーンに使われ、岸辺に並ぶ歴史あるコテージも映画に登場します。

スリップウェイ(船下ろし場)や港の石壁は今も当時の姿をとどめており、スクリーンで見たままの雰囲気を感じることができます。

午後

午後は、ウェールズ・コースト通りを歩いて周辺を巡ります。

所要時間や体力に応じて、周辺のウォーキングルートからお選びください。以下に主なルートをご紹介します。

宿泊

フィッシュガード・ベイ・リゾート

フェリーボート・ゲストハウス

マナー・タウンハウス

食事

レッド・オニオン・ガーデン・カフェ

ナリッシュ・ベーカリー

ザ・グルメ・ピッグ

フックド・アット・サーティワン

フィッシュガード周辺のレストランやバーについて、詳しくはこちらをご覧ください。

3日間のバートンゆかりの旅の締めくくりに、ペンブルックシャーやウェールズ西海岸への旅をさらに広げてみるのもおすすめです。

フィッシュガードの先には、ペンブルックシャー・コースト・パスに沿う壮大な海岸線の散策路をはじめ、美しいビーチや、6世紀に建設されたセント・デイヴィッズ大聖堂など、歴史と自然が調和する景色が広がっています。

海の眺めを楽しみ、新鮮なシーフードを味わいながら、バートンの歩みに思いを馳せる、静かで豊かなひとときを過ごすことができます。

海の向こうに陸地が広がる風景
フィッシュガード

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